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埼玉発~全国へ 教育インタビュー 川﨑 友梨 元日光東照宮神職

86407 有識者やがんばっている若者達を紹介する教育インタビュー。

第12回は、女性としてはじめて日光東照宮の神職をつとめられた川﨑 友梨さんにお話を伺ってきました。

【プロローグ】

日光東照宮といえば、東照大権現として徳川家康が祀られたことでひろく知られ、その荘厳なたたずまいは、まさに神秘性を帯びており、当時における徳川幕府の栄華を実感することができる。

文字通り歴史と伝統に彩られた荘厳な空間であり、日本全国はもとより、海外からの参拝者も多い。

そんな由緒正しき日光東照宮の長い歴史の中にあって、女性としてはじめて神職をつとめたのが、今回ご紹介する川﨑友梨さん(久喜市在住)。

今回は川﨑さんが、日光東照宮の神職となったいきさつをお聞きしつつ、川﨑さんにとってかけがえのない存在である日光東照宮への思いをうかがってきた。

日光東照宮は自然と芸術の和

       川﨑 友梨 元日光東照宮神職(久喜市在住)

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【日光東照宮初の女性神職へ】

依田(聞き手):川﨑さんは、女性として初の日光東照宮神職につかれたわけですが、そのきっかけやいきさつを教えてください。

川﨑:子どもの頃から怖い話や伝説、民話のようなものが大好きで、歴史にも興味をもっていました。

日光東照宮に関しては、まずその彫刻たちの素晴らしさに心をうばわれましたね。

彫刻群は、ひとつひとつすべてが素晴らしく、それぞれにいわれがあって、そのすべてが違う大工さんによってつくられているんですよ。

まさに、日本の大工さん達による彫刻技術の集大成だと思います。

私が学んだ國學院大學では、神職の資格を取ることができ、それがご縁で日光東照宮でのお仕事をさせていただきました。

女性ということもあって、日光東照宮に入った当時は神職ではなかったのですが、「神職についてみないか?」とのお声がけをいただいたといういきさつです。

とても光栄なことだと、いまでも実感しています。

依田:神職としてのおつとめは、いつ頃からどれくらいなさっていたのですか。

川﨑:2008年4月から4年間、お世話になりました。

もっと続けたい!という気持ちで一杯だったのですが、大学院でさらに学びたいことがあり、日光東照宮でのおつとめとの両立は出来ませんでした。

でも、日光東照宮のことが大好きだし、素晴らしい4年間でした。

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【神職としてのおつかえ】

依田:日光東照宮では、日々、どのようなお仕えをしていたのでしょうか。

川﨑:ご祈祷、朱印、祭礼奉仕、それに境内のご案内といったことなどをしていました。

依田:日光東照宮は、非常に大規模ですが、ご祈祷はどこでされるのでしょうか。

川﨑:祈祷殿という建物があり、そこですることになっています。

依田:神職のかたが、自らご案内をするとのことですが、どういった部分をご説明されるのでしょうか。

川﨑:彫刻の素晴らしさや建築物についてのご説明をさせていただきました。修学旅行でいらっしゃる皆さんが多かったことが印象に残っていますね。

20160425_150157 【神職時代の思い出】

依田:日光東照宮の神職時代で、特に思い出に残っていることがあったら教えてください。

川﨑:まず一言であらわすと「ご縁」ということを強く感じました。

日光東照宮は、自然と建物のコントラスト、その調和が本当に素晴らしく、ここにお仕えできていることの幸せを感じました。

もう、その素晴らしさは、言葉では表現できないほどです。

日々、こんな素敵な場所でお仕えできることに感謝していましたね。

また、どうしても忘れられないのは、参拝者の皆さんとの交流です。

本当に、沢山のご縁をいただきましたし、その中でもとりわけ思い出されるのは、ある女の子との出会いでした。

ある日のこと、女の子が私に声をかけてくれまして、「この手紙を神様に渡してくれませんか?」と言うのです。

事情を聞きますと、その女の子は耳がご不自由であったため、器具をつけていたのだそうですが、それを取り外す手術をすることになり、日光東照宮へお父さんと参拝され、「どうか痛くありませんように」と、お祈りされたのだそうです。

すると、参拝した日の夜、なぜか自然に、その器具が外れたとのことで、女の子は「神様にお礼を言いたい!」とつよく思い、神様にお礼のお手紙を書いたのだそうです。

そのお手紙をあずかったときの気持ち、感触は、いまだに忘れることができません。

日光東照宮にお仕えしてよかった!と、思った瞬間でしたね。

依田:お話をうかがっていて、どれだけ川﨑さんが感激されたかが、伝わってきますよ。その女の子の手紙は、どうされたのですか。

川﨑:神前にそなえさせていただきました。日光東照宮には、いまでもそのお手紙が大切に残されているはずです。

【川﨑さんセレクト:日光東照宮のみどころスポット】

0646z 依田:川﨑さんなりに、一般的にあまり知られていない日光東照宮の逸話やスポットがありましたら、ぜひ教えてください。

川﨑:そうですね。もう本当に沢山のお勧めがありますし、ぜひその彫刻群はご覧になっていただきたいのですが、あえてあげれば、まず陽明門の前にある柱の裏にいる獅子の彫刻をお勧めしたいと思います。

これは、「恐悦飛び越えの獅子」とか「恐悦至極の獅子」と呼ばれているのですが、ひとつの石から彫り上げた素晴らしい作品で、しかもこの石を運びながら大工さんが仕上げたという逸話もあります。

3代将軍家光公が、この獅子の彫刻をとてもお誉めになり、「恐悦至極に存じます」とこたえたという逸話が残っています。

日光東照宮を参拝される多くの皆さんが、絢爛豪華な陽明門に目を奪われてしまうため、この獅子の彫刻の存在が、見逃されがちなんですよ。

そんなことも含めて、私はとっても可愛い!ってお気に入りです。

スクリーンショット(2012-10 もうひとつあげますと、「照降石」というものがあります。

日光東照宮、最初の鳥居の下にある石なのですが、お天気の変化を知らせるかのように色が変わるんですよ。

たとえば、雨が降ってくるときには、石の色が変わり、いち早く分かるため、地元の人々は、天気予報よりも照降石のほうが当たる!ということで、よくご覧になっていますよ。

著名なお天気キャスターのかたも、見学にお見えになりました。

さらに言えば、会津藩主だった松平容保さんが、戊辰戦争の後、日光東照宮の宮司をつとめられており、そういったことに思いを馳せていただくことも興味深くご見学できるかと思います。

DSC_0023 【素顔の川﨑さん】

依田:初の女性神職として日光東照宮で仕事をされた川﨑さんですが、日常の趣味とか興味をもっていることはありますか。

川﨑:趣味と言っていいのか分かりませんが、旅行が大好きです。

行きたい!と思ったら、一人でも旅行に出かけていますよ。

依田:特に気に入っている場所とか思い出に残っているところはありますか。

川﨑:ハワイですね!

依田:ハワイのどんなところに魅力を感じていらっしゃるのですか。

川﨑:ハワイへは、子どもの頃から何度か行っているのですが、ビショップミュージアムという王家ゆかりの博物館があって、とっても気に入っています。

まず、外壁はハワイの溶岩でつくられ、まるでお城のようでわくわくします。

展示も、ものすごく充実していて、ハワイの王家の歴史も知ることができます。

それでいて、日系一世からの展示も行うなど、日本の文化について神道にも触れる取組もしていて、移民をも受け容れる懐の深さを実感しました。

何度でも行ってみたい場所ですね。

依田:私の祖父の兄もハワイ日系一世なんですよ。

川﨑:すごいですね!日系一世の方々のお写真も沢山展示されていましので、きっと写っていらっしゃたでしょうね!

20160425_144630 依田:川﨑さんは、かなりの読書家だとお聞きしていますが、特に気に入っている本はありますか。

川﨑:はい。読書は大好きです!特に怖い本が(笑)

その中から4冊をご紹介しますと、まず加門 七海さんが書かれた「うわさの神仏 江戸TOKYO陰陽百景」ですね!

東京、江戸の怖い場所大集合!といった内容で、地図なども充実していて、とても興味深いですよ。

作者の加門 七海さんは、日光東照宮にもいらっしゃったことがあり、お会いいたしました。

それと、英文の本ですが、「Yurei Attack! The Japanese Ghost Survival Guide」は、もう怖すぎて、表紙買いしちゃいました!

外国の皆さんのための日本の幽霊ふれあいガイドといったような本です。

もう一冊も英文の本ですが、「THE BEST OF HAWAI ‘I’S BEST SPOOKY TALES」という本もお気に入りです。これは、ハワイに伝わる怖い話を集めたものです。

また、先日先輩に勧められて藤沢周平さんの「孤剣 用心棒日月抄」を読みまして、とってもよかったです。

依田:川﨑さんらしいですね。でも、同世代のお友達とは話があわないのでは?

川﨑:まったくダメですね(笑)でも、怖い話関係ですと、そういったことが大好きな人が集まるイベントがありまして、出かけては語り合ってきます。

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【アフター・ザ・日光東照宮】

依田:川﨑さんは、日光東照宮の神職をつとめられた後、大学院で学ばれ、埼玉県立歴史と民俗の博物館や加須げんきプラザでのお仕事もされてきたわけですが、そのご感想をお聞かせください。

川﨑:人との関わりの大切さを改めて実感しています。

職員の皆さんとの交流はもちろんのこと、サポーターさんやボランディアの皆さんと触れあえることが嬉しいですね。

また、小学生の皆さんとお会いする機会も多く、日光東照宮時代を思い出すこともあります。

行事で講師をお願いするときなど、講師のかたと歴史の話で盛り上がっちゃたりすることもあるんです。

日光東照宮時代の経験が生きているなと、改めて有り難いことだと感じますね。

【これからの抱負】

依田:貴重な経験をたくさんされてきたわけですが、川﨑さんの今後の抱負や目指そうとしていることについて教えてください。

川﨑:今は、とにかく自分の好きなこと、興味のあることを追求していきたい!という気持ちでいます。

結果的に、そのことが多くの皆さんのお役に立つことになれば、これほど嬉しいことはありません。

依田:本日は、興味深いお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。益々のご活躍を期待しております。

川﨑:こちらこそ、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

DSC_0021 【エピローグ】

何事も、どんな世界でも「はじめて」というものは多くの苦労もあるものではないだろうか。

歴史と伝統をもつ日光東照宮初の女性神職として立派につとめあげた川﨑さん。

まさしく、後進のために道をつくったと言えるだろう。

川﨑さんと接していると、凜とした女性であるという実感がわいてくる。

人に接するに、その誠実さと謙虚さが、ひしひしと伝わってくるのだ。

今後、ますますのご活躍を祈らずにいられない。

文末になったが、ご多用の中、こころよくインタビューに応じてくださった川﨑さんに、心からお礼を申し上げる次第である。

2016年5月

(取材と文責:依田 透)