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教育インタビュー 石川 薫 総合教育センター教育主幹兼主任指導主事
埼玉から全国の皆さんへお届けする教育インタビュー。

第二回は、埼玉全県の教職員研修など、これからの学校教育発展に尽力されている石川 薫(いしかわ かおり)埼玉県立総合教育センター教育主幹兼主任指導主事にお話を伺います。

石川さんは、教職員研修をはじめ様々な教育施策を統括する重責を担う人であり、家庭科教育のオーソリティーでもあります。

また、日本とブラジルとの友好にも多大なる貢献をされるなど、実に幅広くご活躍されている存在です。

子供達がいるから頑張れる

石川 薫 埼玉県立総合教育センター教育主幹兼主任指導主事

石川教育主幹0001

【仕事そして家族】

依田(聞き手):まず、総合教育センターで、石川さんが担当、所管されている仕事の概要を教えてください。

石川:センターにお世話になって、今年で3年目となります。

一昨年は、教育課程と学校体育担当を統括していましたが、昨年からは、企画調整担当、教職員研修担当、生涯学習推進担当の3担当を統括しています。 さらに、JICAの草の根技術協力事業として、ブラジルの子供達の教育支援にも関わっています。

依田:石川さんこそ適任だと思いますが、実際、かなりハードではありませんか。

石川:所員が前向きで一生懸命ですし、グループリーダーが中心となり、しっかりやってくれていますから本当にありがたいです。

依田:それは、石川さんの元、職員全員が働きやすいということでしょうし、頑張ろうという気持ちになるのでしょうね。

依田:総合教育センターは、マンモス組織と形容してよいほどに大きな教育施設です。 その中にあって石川さんは、センターの心臓部であり、尚且つ外部との連携など、センターの顔としての役割も果たしていらっしゃいます。 かなりの事務量だと思いますが、ご家族との時間や余暇は、しっかり取れていますか。

石川:家族との時間が取れているかと言えば、あまり取れていませんと言わなければならないかもしれません。 ただ、教員になってからこれまでのことを振り返ると、今が一番家族との時間が取れていると思います。 子供達が小さい時、一緒にいる時間がほとんどなかったので、今さらですが、家にいるときは、娘とくっついています。 もちろん、娘は嫌がっていますが…。

依田:娘さんも、お母さんが一生懸命がんばっている姿を見て、分かってくれているのではないでしょうか。

石川:そうだとしたら有難いです。

依田:休日の過ごし方や趣味について教えてください。

石川:とても恥ずかしいのですが、平日の家事は最低限のことしかやっていないことを反省し、休日は家事に専念?しています。 最近は、娘とのショッピングが楽しみです。 読書や一人で映画を観ることも好きです。

依田:娘さんとのショッピングは洋服、ファッションなどですか。

石川:はい。娘に似合いそうな服を一緒に選んでいます。長い間、娘にしてあげることがなかったので。

朝顔 【現代における家庭科教育の重要性】

依田:石川さんは、県の家庭科教育に長年携わってこられました。 私は、昭和期に小学校で家庭科を学びましたが、その後、学校における家庭科の授業、学習の基本的考え方も変化してきていると思うのですが、その点について教えてください。

石川:高校で家庭科が男女必修となり、既に20年になります。 私達の時代の男性は、家庭科と言ってもピンとこないかもしれませんが、今は普通に男子高校生が家庭科を履修しています。 中には、家庭科の教員として活躍している男性もいます。

家庭科では、裁縫や料理をしているイメージがまだあるかもしれませんが、実はもっとたいへん幅広く、奥の深い科目です。 家族や家庭の在り方、衣食住の科学的な理解、消費者問題、子供の発育や高齢者の福祉など、私達をとりまく生活すべてに関わる教科です。

依田:現代において、特に求められる重要な部分が網羅され、教育の根幹であると言っていいような気がします。

石川:生きるため、生活のすべてに関わる教科です。とても幅広い教科であることを皆さんに理解していただきたいです。

依田:小学校、中学校、高校と、それぞれにおける家庭科教育の授業内容や目的には、どのような違いがあるのでしょうか。

石川:簡単に説明すると、小学校では、家族の一員として生活をよりよくしようとする態度を育てること。 中学校では、課題をもって生活をよりよくしようとする能力と態度を育てること。 高校では、主体的に家庭や地域の生活を創造する能力と実践的な態度を育てることが目標です。

依田:石川さんが考える、家庭科教育の意義、そして今後の課題がありましたら教えてください。

石川:私は、大学時代に社会の基盤である家庭が、その機能をしっかり果たさないと大変なことになってしまうと考えるようになり、高校の家庭科の教員になりました。 家庭や地域社会の課題を主体的に解決すること、生活の充実向上を図る能力や持続可能な社会を目指す態度は、今後ますます大切になってきます。

仕事と家庭生活のバランスをとりながら、よりよく生きていくことが求められる時代です。 そのような意味では、大変意義ある教科であると考えています。

依田:私自身、家庭科の持つ大切さを改めて実感しました。もっともっとクローズアップされるべきですね。

石川教育主幹0002 【教師時代~忘れ得ぬ生徒との思い出】

依田:教師として教壇に立っていた頃、特に思い出に残っていることはありますか。

石川:生徒との思い出は数えきれません。 私は教員としては2校しか経験しておりませんが、学校で生徒と過ごした時間は、本当に貴重なものでした。

初任の頃は、少しやんちゃな生徒もいましたが、みな一生懸命でした。 あの頃に生徒達と一緒に頑張った経験が、今の仕事につながっているといってもいいのではないでしょうか。 まだまだ未熟な教員だったと思いますが、先生方にも恵まれて頑張ることができたと思っています。

2校目は、家庭に関する専門高校でしたが、資格取得という夢に向かって、クラスで一丸となり頑張りました。 実習や文化祭の準備など、結構遅くまで学校にいました。 まだ子供が小さかったので、一度家に戻ってから子供を連れて学校に戻ったこともありました。 学校を離れるのがいやで、異動のときは本当につらかったです。

離任式のとき、担任をしていたクラスの列の中に、退学してしまった生徒が制服を着て並んでいて、その時は涙が止まりませんでした。 本当は、あってはならないことなのでしょうが、先生方や生徒達の温かい気持ちに胸がいっぱいになりました。

依田:先生になっていなければ出来ない経験ですね。 その子とは話が出来たのですか。

石川:ただただ感動が込み上げてしまったのですが、「先生!元気でやってるよ」と言ってくれたことは、忘れることができません。

【教頭時代~常に走り続けていた日々】

依田:不動岡誠和高校、教頭時代のことを伺います。 特色のある高校のひとつだと思いますが、特に印象に残っていることはありますか。

石川:無事に新校が開校するよう、魅力ある学校づくりを目指して常に走っていたように思います。 忙しい毎日でしたが、先生方と協力して新しい学校をつくるのは本当に楽しかったです。 介護福祉士の資格取得に向けた教育課程の編成は大変でしたが、とうとう昨年、今年と合格率100パーセントとなり、本当にうれしいです。 総合学科の中に、保育系列と看護系列もありますが、これらもそれまでの経験を活かせるものでしたので、何だか強いつながりを感じました。

依田:100パーセントというのは半端なことではないと思います。すごいですね。

石川:今年の全国平均合格率は64.6パーセントですので、本当にうれしく思っています。

依田:こういった学校の存在は、積極的にアピールしていきたいですね。

石川:ありがとうございます。そうありたいと思います。

himawari 【県教育行政の中へ~どこにいても生徒のために】

依田:石川さんは教員として務められ、その後教育局の主に指導畑の仕事に就かれ、実績を残していらっしゃいましたが、学校と事務局を両方ご存知の立場として、何か得たもの、あるいは辛かったことなどがあれば教えてください。

石川:現場から高校教育指導課に異動したときは、転職した気分でした。 生徒がいなくて、とても寂しかったのですが、学校と生徒のことは忘れずにいようと考えていました。 今も学校や生徒のことを考えながら、仕事を進めるように心がけています。 現場と行政の両面から教育を考えることができ、参考になったことがたくさんありました。 仕事内容もそうですが、何より多くの方々とのつながりができ、それが大きな財産です。

依田:特に学校教育は、子供達のためにあるものだと思うし、どこにいても第一に考えるというのは素晴らしいことですね。私はそう思います。

石川:どこにいても、この仕事は子供達につながっている。そう自分に言い聞かせてやってきました。 子供達がいるから、きっと今も頑張れるのでしょうね。子供達のためになるようないい仕事をしたいですね。

プリント 【ブラジルとの絆~国際貢献の実現】

依田:国際協力機構(JICA)について伺います。 ブラジルの子供達への支援、交流を行っていますが、その概要を教えてください。

石川:JICAの「草の根技術協力事業」として、埼玉県教育委員会がブラジルの貧困層の子供達への教育支援を行っています。 主管は高校教育指導課ですが、事業実施はセンターが主体となって進めています。 ブラジルのリオにあるマイン・マロカスという社会教育活動施設の教育内容の向上を目指して、主に幼児教育・情報教育・集団活動を中心に支援しています。

現地の指導者がセンターや県内の学校で研修を行ったり、こちらから指導主事が現地へ行き、子供達や指導者を対象にワークショップをしたりしています。 ブラジルの子供達と県内で保育を専門に学習している高校生が作成した「TOMODACHI KARUTA」も、その成果の一環です。

依田:貧困にある子供達のためにという趣旨があると思いますが、逆に彼等から埼玉あるいは日本が学び、得るところはありますか。

カルタ 石川:この事業をとおして私達が学ぶことはたくさんあります。 グローバル人材の育成が叫ばれる中、新興国であるブラジルと協力し、様々な取組を進めることにより、本県の異文化理解教育の推進を図ることができます。

今回の埼玉研修でも、県内の学校を訪問し、児童生徒との交流や意見交換などを行いました。 小学校では、一緒にカルタを行いましたし、高校生によるコンサートも実施しました。

また、県内にはブラジル国籍の子供達も多くいますので、そのような子供達の教育の充実にもつなげたいです。

【どんなに大変な仕事でも子供達のために】

依田:石川さんにとっての教育行政、学校教育における今後の抱負をお聞かせください。

石川:これまで教育現場、行政と様々な仕事をさせていただきましたが、上司や仲間など、職場のみなさんに本当に恵まれてきたと思っています。 こんな私が、このように仕事ができていることに心から感謝しています。

どんなに大変な仕事でも、仲間と楽しく仕事ができれば最高です。 それが最終的には子供達のためになると考えています。

先生方一人ひとりがその力を十分に発揮できて、学校全体がいいチームとして機能することができる、子供達はもちろん先生方も生き生きと働くことのできる、そんな学校がいいですね。

【どんな時でも応援してくれる人がいる】

依田:結びになりますが、学校で学ぶ子供達に一言お願いします。

石川:楽しい時、うれしい時、苦しい時、悲しい時…

どんな時でも皆さんを応援してくれる人が必ずいます。

夢に向かって一緒に頑張りましょう。

日本ブラジル交流カルタ <余話として>

今回、石川さんのお話をじっくりお聞きする機会に恵まれ、何とも形容し難い感動を覚えた。 それは優しく、あたたかく心に響いてくるもの。

石川さんの笑顔に接していると、どんなときも前向きに歩いていこうという気持ちになるから不思議だ。 それはきっと長い時間の中で、また、訪れる日々を生徒達と心から向かい合ってきたからこそのものではないだろうか。

石川さんに出会った生徒達は、本当に幸せだと思う。

文末になったが、日々ご多用の中、快くインタビューに応じてくださった石川さんに改めて厚く御礼申し上げたい。

また、今回の取材に当たり、ご高配を賜った総合教育センター内田所長様に心からの感謝を捧げたい。

(取材と文責:依田 透) 石川教育主幹0003